【第10回】「認定新規就農者」から、プロの経営者へ

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ここまで来た

「認定新規就農者」──その肩書きが意味するもの

単なる自称農家ではない

あなたがこれから目指すのは
まずは
認定新規就農者」という肩書き。

これは市町村に事業計画書を提出し
「この人なら地域農業を担える」と公的に認められた証です。

誰でも名乗れる「自称農家」とは、まったく重みが違います。

青年等就農計画を通じて審査され、
無利子融資や補助金の対象となり、
農地取得の優遇措置を受けられる──

それは同時に、「失敗は許されない」というプレッシャーでもあります。

孤独との戦いが、今始まる

研修期間中は、師匠がいました。
わからないことがあれば、
隣で手取り足取り教えてくれる先輩がいました。

でも独立後は違います。

苗を植える間隔を間違えれば、あなたの責任。
病害虫の兆候を見逃せば、あなたの責任。
収穫のタイミングを誤れば、数百万の売上が消える──これも、あなたの責任。

誰も代わりに判断してくれません。

朝4時に起きて畑を見回るのも、
夜中に天気予報とにらめっこするのも、
出荷前日に選果作業で腰を痛めるのも、
すべてあなた自身の選択です。

次の世代へ「バトン」をつなぐ誇り

あなたは、地域の守り手になる

もう一つ、忘れないでほしいことがあります。

あなたが就農するということは、単に「自分が食べていく」という話ではありません。

その土地の風景を守り、
その地域の農業の歴史を次世代につなぐ──

そういう社会的な役割を担う、ということです。

岡山県のシャインマスカットも
京都府の京野菜も
青森県のりんごも、
山形のさくらんぼも、

誰かが「やめた」瞬間、その産地は消えます。

今、あなたの目の前に広がる畑は、
50年前、100年前から誰かが守り続けてきた歴史そのものです。

あなたは、その最前線に立つわけです

これは誇りです。

一人では折れる。だから、仲間を持て

ただし、誇りだけでは生きていけません。

孤独に耐えられなくなる日が、必ず来ます。

台風で作物が全滅した夜。
思うように販路が広がらない焦燥感。
家族に「今月も赤字だ」と報告する時の無力感。

そんな時、支えてくれるのは同じ志を持つ仲間です。

就農前研修で出会った同期。
地域の若手農家グループ。
農業法人時代の先輩。
SNSで知り合った他県の新規就農者。

彼らと情報を交換し、愚痴を言い合い、刺激を受け合う──

それが、長く経営を続けるためのセーフティネットになります。

そして、いつかあなた自身がメンターになる日が来ます。

かつてのあなたのように迷っている後輩に、
「大丈夫、俺も通った道だから」と言える日が。

その背中を見せられるか。

それが、5年後、10年後のあなたを支える力になります。


スタートラインでの「3つの誓い」

では、ここからが本題です。

認定新規就農者として独立したあなたが、経営を長く続けるための自分ルールを3つ提案します。

誓い①「数字から逃げない」

農業は感性の仕事ですが
経営は数字の仕事です。

売上、経費、利益率、労働時間──
すべてを記録し、毎月振り返る習慣をつけてください。

青色申告の帳簿をつけるのは義務ですが、
それを「義務だから」と嫌々やるのではなく、
「経営を良くするための武器」として使いこなしてください。

どの作物が利益率が高いのか。
どの作業に一番時間を取られているのか。
昨年と比べて何が改善され、何が悪化したのか。

売上ではなく、粗利を見る。

固定費と変動費と原価率を考える

数字が語る真実に、耳を傾け続けること。

これが第一の誓いです。

誓い②「市場の声を聞き続ける」

「今年はこれを作りたい」という情熱は大切です。
でも、「お客様が本当に求めているのは何か」という視点はもっと大切です。

スーパーの売り場を見る。
直売所で他の農家の商品をチェックする。
お客様の声をSNSで拾う。
飲食店のシェフに直接ヒアリングする。

市場は常に変化します。

去年売れたものが、今年も売れるとは限りません。

変化を恐れず、柔軟に対応できる経営者であり続けること。

これが第二の誓いです。

誓い③「体を壊さない」

最後に、これが一番大事かもしれません。

農業は、あなたの体が資本です。

腰を痛めたら終わり。
膝を壊したら終わり。
熱中症で倒れたら、その日の作業は止まります。

「若いから大丈夫」
「気合いでなんとかなる」

──そういう精神論は、40代で必ずツケが回ってきます。

無理をしない。
機械化できる部分は投資する。
休む時は、しっかり休む。

10年、20年と続けるためには、
短距離走ではなくマラソンのペース配分が必要です。

健康を失った経営者に、未来はありません。

これが第三の誓いです。


ブログの終わりに──「本当の豊かさ」の正体

10回にわたって、厳しいことを書き続けました。

「儲からない」
「辛い」
「孤独だ」
「失敗する人の方が多い」

なぜか。

甘い夢だけで飛び込んで、潰れていく人を何人も見てきたからです。

でも、ここまで読み続けたあなたなら、もう大丈夫です。

リスクを知った上で、それでも「やる」と決めた人は強い。


最後に、問いかけます。

「豊かさ」とは、何でしょうか。

年収2,000万稼ぐことでしょうか。
都会の友人より裕福な暮らしをすることでしょうか。

私は違うと思います。

朝、自分の畑に立った時、
「ああ、今日もここで働ける」と思えること。

自分が育てた作物を食べた人が、
「美味しかった」と笑顔で言ってくれること。

地域の祭りで、
「あんたが来てくれて、この集落は助かった」と言われること。

10年後、後輩が
「先輩の背中を見て、僕も就農を決めました」と言ってくれること。

それが、農業でしか手に入らない「本当の豊かさ」です。


お金では測れない、
SNSの「いいね」では評価できない、
でも確かに、あなたの人生を満たしてくれる価値。

それを手に入れるために、あなたはこれから戦います。

鏡の中の「新しい自分」を信じてください。

あなたはもう、迷える志願者ではありません。

一人の経営者です。


最後のチェックリスト──今日から始める3つのこと

①認定新規就農者の申請書類を再確認し、事業計画の数字を自分の言葉で説明できるようにする

②同期や先輩農家に連絡を取り、「困った時に相談できる関係」を今から築いておく

③5年後の自分に手紙を書く──「何を成し遂げ、どんな経営者になっていたいか」を文字にする


ここまで読んでくれて、本当にありがとうございました。

頑張ってください。応援しています。

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